第5回口頭弁論での弁護団の意見陳述(要旨)

2019年2月25日(月)に横浜地裁で第5回口頭弁論が開かれましたが、その時の弁護士の意見陳述の要旨を掲載します。 

 弁護団からは、当事者訴訟としての確認請求の訴訟要件について、米軍の権限について、行政権の行使に関する求釈明、米軍の権限についての書面を提出した。

 行政権の行使に関する求釈明を担当した弁護士三宅千晶は、民事訴訟において、原告らが騒音不到達を実現するための対米交渉を求めた請求に関し、被告の答弁(同請求は行政権の行使を求めるものであり民事訴訟としては不適法と主張)への反論を行い、被告の主張の趣旨を明らかにするよう求める要求を行う(求釈明)。

 原告の行う請求は、第5次訴訟で初めて採用したものである。違法な騒音の不到達の実施に至るまでの間、適切な対米国交渉を行うことを求める請求であり非権力的行為を求めるものであることはいうまでもない。被告がこれを「行政権の行使」だと主張すること自体、法的な根拠に基づかない誤った主張である。弁護団としては、被告の主張の誤りを明らかにして、裁判所に上記請求の正しい理解を求め、新しい請求に関する議論を深めていくこととしたい。

 当事者訴訟としての確認請求の訴訟要件についてを担当した弁護士岡部玲子は、被告が当事者訴訟としての確認請求に対して、確認請求としての要件を欠くとの被告の答弁に対する反論を行った。

 被告は、原告らが行う確認請求(一定以上の航空機騒音を被ることなく生活する権利を有することの確認を求めるもの)について、自衛隊機の運航についての違法確認と米軍機への施設共用についての確認請求の混同であるなどと主張する。しかし、これは原告の請求の内容を完全に誤って理解しているに過ぎない。

 我々の主張は、厚木基地の騒音について自衛隊機、米軍機などと区別せず、その全ての飛行に関して、原告らに一定以上の違法な騒音をもたらさないように求めるものである。かかる確認請求は、原告らには憲法上の人格権に基づき、侵害されえない権利を有することの確認を行うことによって、将来の権利侵害を防止させ、紛争を解決する手段として適切といえる。

 新しい請求に関する被告の無理解は甚だしく、訴訟上の議論がかみ合わない状態にある。我々の請求の正しさを裁判所は理解すべきであるし、請求に対する被告の誤った理解は早急に正されなくてはならない。

 米軍の権限についてを担当した弁護士関守麻紀子は、我が国における米軍の権限について主張した。

 米軍機の差止めについては、過去いずれの訴訟においても、いわゆる第三者行為論により退けられている。米軍に対しては、過去の判例において「条約ないしこれに基づく国内法令に特段の定めのない限り、米軍機の運航等を規制しその活動を制限することはできない」との判断が示され、被告も同様の答弁を行う。

 しかし、これは原則と例外が逆であり、国際法上の原則からいえば「米軍に対しては、我が国の法令の適用を免除するという特段の定めのない限り、我が国の法令の適用がある」というのが正しい理解なのである。上記書面では、この当たり前の理屈を領域主権の原則、日米地位協定の構造に基づき、詳細に理由付けした。

 さらに、地位協定2条4項(b)の適用により、厚木基地の滑走路部分には我が国が管理する一時使用の適用がある施設・区域となり、米軍に管理権が認められない。このことを改めて主張し第1次厚木訴訟最高裁判決の誤りを指摘した。

 我が国は主権国家である。我が国に駐留する外国軍に国内法規が適用されることは当然の原則なのである。

弁護団事務局長 弁護士佐賀悦子