第1回口頭弁論大波団長陳述
5月21日に開かれた第1回口頭弁論で大波修二団長他3名が原告として意見陳述を行いました。代表して大波団長の陳述文を掲載します。
平成29年(ワ)第3397号、平成29年(行ウ)第42号 ほか
意 見 陳 述 書
2018年5月21日
横浜地方裁判所第1民事部 御中
神奈川県大和市
原 告 大 波 修 二
1 原告の大波修二です。
第5次厚木基地爆音訴訟原告団の団長として、第1回口頭弁論にあたり、陳述いたします。
2 本件訴訟は、「第5次厚木基地爆音訴訟」という名の示すとおり、5度目の提訴です。
1971年に第1次訴訟が提訴されて以来、厚木基地の周辺地域に居住する住民たちは、40年以上もの長い間、訴訟を続けることを余儀なくされています。
過去4度の裁判はすべて、厚木基地の騒音は基地周辺住民の受忍限度を超えており違法である、と判断して損害賠償を認め、これらの判決は確定しています。
しかし、厚木基地の米軍機、自衛隊機による騒音は、依然として、私たち市民の生活を脅かし続けています。
司法の違法判断が繰り返されているにもかかわらず、違法な状態が是正されない。私たちの生活は、このような異常な状況の下にあります。
第4次訴訟において、横浜地方裁判所、東京高等裁判所は、自衛隊機の飛行の差止請求を、一部ではありますが、認めました。爆音の元凶は米軍機でありますので、私たち原告には、米軍機の飛行差止めが認容されなかったことに落胆する気持ちもありましたが、自衛隊機の飛行差止判決は、裁判所が、原告らの訴えに真摯に耳を傾け、現地に足を運んで爆音を体感することによって、爆音被害の実態を正しく理解してくれだからこその判断である、と受け止めました。爆音被害の根絶への第一歩を踏み出す判決であると考え、うれしかったです。
しかし、2016年12月8日、最高裁判所は、いとも簡単に、横浜地方裁判所、東京高等裁判所の判決を覆しました。自衛隊機飛行差止めも、将来にわたる損害賠償も覆され、長い年月をかけて積み重ねてきた被害解消の努力を振出しに戻されたように感じ、心から怒りを覚えました。
このままでは爆音被害を解消することはできない、という危機感が私たちを突き動かし、第4次訴訟の原告が中心となって、第5次訴訟を立ち上げました。一般の市民にとって、国を相手に裁判を起こすことは容易なことではありません。
ですが、短期間のうちに、第4次訴訟を大きく超える多数の市民が集まりました。厚木基地の爆音の被害の深刻さ、飛行差止め要求の切実さを如実に示しているといえます。
3 私は、市民団体「厚木基地爆音防止期成同盟」(通称「爆同」)のメンバーであり、また、8期32年目になる大和市市議会議員でもあります。
爆同は、騒音状況が急激に悪化した1960年に結成され、以来、「爆音をなくし平和で静かな空と生活を取り戻す」ために、防衛庁(省)をはじめとする国、県、市への要請を重ね、法務局に人権侵犯の救済申し立てをするなど、爆音被害解消のための手立てを尽くしました。 しかしそれでも一向に改善しないため、住民はわらをもすがる思いで司法に希望を託し、第1次訴訟を提起するにいたったものです。そして今もなお、各方面への要請などの活動を継続しています。
被害解消のために、これほどの長期間にわたり多くの住民が努力を重ねてきているのです。
また、市議会議員である私の下へは、被害解消を切望する市民の声が寄せられます。「病気を抱えているのに騒音で眠ることもできない、病気が治らなくなるのではないかと不安が募る」、「爆音にさらされるたびに、幼い子どもの成長に悪影響を及ぼすのではと考えると心配でたまらない」、「この爆音はなんとかならないか」、「オスプレイの音を聞くと、今にも墜落してくるのではないかと恐怖に襲われる」等々、提示しきれません。
厚木基地の周辺では、50年以上も前から、これだけ多くの市民が爆音に苦しめ続けられてきたという実態を、ぜひ理解していただきたいと思います。
4 最近、米軍再編による空母艦載機が岩国基地へ移駐し、厚木基地の爆音が軽減するかのような報道も見られます。
しかし、昨年(2017年)8月に在日米海軍司令部は、岩国移駐についての報道発表で、厚木基地が「引き続き日米同盟にとって重要な基地」であり、移駐後も厚木基地を使用すると宣言しています(添付資料)。またそもそも米軍機を艦載する米空母の母港が横須賀基地であることに変わりはありません。米軍による厚木基地の運用や騒音状況は、歴史的にも変動しながら推移してきており、今後の国際情勢によって再び配備の変更がなされる可能性も十分考えられます。岩国に移駐しないで残っているヘリコプターや輸送機も従前どおり飛行します。
また、厚木基地所属ではない米軍機も度々飛来しており、特に最近ではオスプレイが頻繁に飛来するようになりました。オスプレイが、「欠陥機」、「未亡人製造機」の異名をとるほど事故を多発させる機体であることは、報道でしばしば見聞きします。このような機体が、大和市のような人口密度の高い住宅密集地の上空を飛び、万が一にも事故を起こせば、未曽有の惨事になることは容易に想像できます。多くの市民が、オスプレイの騒音のうるささとともに事故に対する恐怖を訴えています。
そして、自衛隊機は今までどおり、厚木基地を本拠地として恒常的に飛行活動をしています。爆音被害の解消には、いまだ程遠い状況にあると言わざるを得ません。
5 軍用機の飛行は、私たちの安全で穏やかな生活を破壊しています。
私たち原告がこの訴訟で求めることは、私たちの生活する場所に「軍用機を飛ばさないで欲しい」ということに尽きます。
事故や健康への心配のない毎日を過ごしたい、四六時中イライラさせられることのない生活を送りたい、という願いは、人間としての当たり前の願いではないでしょうか。
裁判官のみなさんには、私たちの苦しみがどのようなものか、被害の実態を正確に把握していただきたい。その上で、軍用機の飛行差止めの判断をされ、60年近くに及ぶ被害の歴史に、今度こそ終止符を打たれることを、切に願います。
私たちは、司法が私たち市民の人権を守る砦となることを、心から期待しています。
以 上