最高裁判所

 東京高等裁判所判決(2015年7月30日)は、自衛隊機の飛行差し止めについて、行政訴訟での一部飛行差し止めを認めましたが、民事訴訟では却下されました。

 また米軍機の飛行差し止めについては、民事・行政訴訟のいずれも請求が退けられたため、2015年8月11日、上告及び上告受理申し立てを行いました。

被告国も将来請求等について上告したため、第四次厚木爆音訴訟は最高裁判所に移行しました。

2016年9月15日、米軍機の飛行差し止めを棄却、
2016年10月31日、上告受理された自衛隊機の夜間早朝の飛行差し止めと将来請求について口頭弁論

    →2016年12月8日、判決言い渡し
最高裁判所 第一小法廷
上告 2015年8月11日(火) 民事・行政訴訟について、上告・上告受理申し立て
2016年6月2日 民事(賠償)国側の主張に対する反論書面提出
2016年9月1日 行政(差止め)国側の主張に対する反論書面提出
決定 2016年9月15日 【民事】
・原告の上告、上告受理申立→棄却
・国側の上告受理申立→受理決定(将来請求部分)

【行政】
・原告の上告→棄却
・原告の上告受理申立→受理決定
・国側の上告受理申立→受理決定
・口頭弁論期日→平成28年10月31日(月)午後3時30分
口頭弁論 2016年10月31日(月)
■弁護団意見陳述(4名)
・「総論」・・・厚木基地の航空機騒音厚木基地がひどくなって半世紀以上の年月が経過している。騒音違法の判決が繰り返されても一向に改善しない。差止め判決をおいてほかにない。(中野弁護士)
・「原告ら上告受理申立理由第6点(裁量権の判断)」・・・高裁判決が認めた『行政目的に比較して被害が不相応に大きい場合のみ自衛隊法107条5項の趣旨に反する』という解釈は同義務の趣旨に合致しない(岡部弁護士)
・「重大な損害を生ずるおそれの訴訟要件」・・・@行政訴訟による実効的救済の門戸は、広く開かれているべきことA航空機運航差止め請求では、基本的に「重大な損害を生ずるおそれ」のようけんは肯定されるべきことB航空機運航処分の公共性・公益性は「重大な損害を生ずるおそれ」の判断において勘案されるべきでないこと(福田弁護士)
・「原判決が認定した事実に基づけば「重大な損害を生ずるおそれ」の要件を充足し、深夜・早朝における自衛隊機の運航は原則として違法である・・・健康被害を中心に(関守弁護士)
■原告意見陳述(2名)
・幼稚園園長(大和市西鶴間)・・・お遊戯会の時、爆音によってピアノやテープの音楽が聞こえなくなるが、そのまま一生懸命に大きな声で歌を歌う園児たちの姿を見ると園長としてとても悲しい気持ちになる。父母が園児の成長ぶりを確認する貴重な機会を爆音により台無しにされる。亡き母の遺志を継いで参加してきたが飛行差し止めを認めて爆音裁判を今回で終わらせてほしい。
・金子団長・・・厚木基地の騒音被害を受けている住民はおよそ250万人といわれている。その中には、成長期の子どもたち、高齢や病気などで激烈な爆音から逃れられない人たちも多数いる。半世紀以上にわたる闘いを余儀なくされている私たちにとって飛行差し止めは悲願であり、命と健康を守る唯一の途です
■被告弁論(国側代理人)
・将来の自衛隊機の運航について、司法権が、それが裁量権の逸脱濫用であり違法であると判断することは不可能である。
・差止めの対象となる処分は自衛隊機の運航のみであり米軍機による騒音を含ませることは許されない。
■判決言い渡しは、12月8日とする(裁判長)
★自衛隊法107条5項・・・防衛大臣は、第一項及び前項の規定にかかわらず、自衛隊が使用する航空機の安全性及び運航に関する基準その航空機に乗り組んで運航に従事する者の技能に関する基準並びに自衛隊が設定する飛行場及び航空保安施設の設定及び管理に関する基準を定め、その他航空機に因る災害を防止し、公共の安全を確保するため必要な措置を講じなければならない。
★平成28年(2016)9月15日の最高裁決定に対する声明文→こちら

★最高裁判所に上告、上告受理申立を行った争点まとめ
民事訴訟 行政訴訟
一審原告
上告及び
上告受理申立
差止め(米軍機・自衛隊機)を認めなかったことについて争う ・米軍機の差止めを認めなかったこと
・自衛隊機の一部差止めを認めなかった部分について争う
一審被告
(国側)
上告受理申立
将来請求や一部外国籍原告の認容等について争う 自衛隊機の差止め一部認容について争う

・上告・・・高裁判決に「憲法違反」がある場合
・上告受理申立・・・「法令の解釈に関して重大な事項」があり最高裁としての判断を示す必要があると考えられる場合