第9回口頭弁論が開かれました

3月2日(月) 第9回口頭弁論が横浜地裁で午後2時半より開かれました。新型コロナウィルスが流行する中、感染拡大を防ぐ意味で原告団の傍聴態勢は組まず、報告集会も中止となりましたが、役員中心に20数人が傍聴いたしました。弁護士による意見陳述は行われました。関守弁護士、石渡弁護士より意見陳述の内容について報告文をいただきましたので、以下に掲載いたします。

第三者行為論のおかしさ―ヨーロッパ諸国との比較、協定締結の経緯から

弁護士 関守麻紀子

ヨーロッパ諸国は、NATO軍地位協定を締結しており、ベルギーは憲法で、イギリスは法律で、ドイツは地位協定の補足協定で、他国の軍隊に自国の法が適用されることを明記しています。イタリアでは、米軍基地もその活動も、イタリアの司令官の統括権限が及ぶとされています。軍隊であっても、自国(受入国)の法が及ぶというのが、国際法の原則であり、NATO軍地位協定が前提とするところでもあるからです。ドイツでは、外国軍隊の低空飛行訓練や騒音による被害の救済のため、ドイツを被告とする訴訟が提起されて、住民の被害救済に一定の道すじをつけています。

そして、日米地位協定も同じでなければなりません。日米地位協定は、1960年の安保条約の改定に伴い、それまでの行政協定を改定して締結されたものですが、その交渉過程は、協定を「NATO軍地位協定並みにする」というものでした。実際、刑事裁判権、民事裁判権の規定は、NATO軍地位協定の規定と同じです。

このように、国際法の原則からも、日米地位協定の締結の経緯からも、その条文の構造からも、米軍に日本の法令が適用されるのが原則です。そして、それゆえ、政府は米軍に対し、日本国法令の遵守を求めることができるのです。そうであれば、基地被害に苦しむ住民は、国を被告として裁判所に救済を求めることができるというべきであり、裁判所が採り続けてきている「第三者行為論」(米軍は我が国の支配の及ばない第三者であるから、裁判で米軍機の差止め請求することはできない、とする裁判所の判断)の理屈は通用しないはずです。

政府は、長い間、米軍には日本国法令の適用がない、これは国際法の原則である、という立場をとり続けてきました。裁判所の「第三者行為論」の考え方は、この政府の考え方に依拠しているものと思われます。しかし、これらの考え方は、国際法の水準とかけ離れた、誤ったものです。近時、沖縄県、琉球新報社や日本弁護士連合会がNATO諸国の地位協定の調査を実施したことで、他国の状況がより明らかになり、日米地位協定についての政府や裁判所の解釈のおかしさが鮮明になりました。この誤った解釈は、正されなければならない時期に来ているといえます。

 

判断過程審査に関する被告主張の不十分性について

弁護士 石渡豊正

私たち原告は、自衛隊機の差止めの可否について、裁判所は判断過程審査という判断手法を用いるべきだと主張しています。厚木4次訴訟の最高裁は、諸事情の総合考慮という極めて粗い判断手法を用い、結果として差止めを棄却しました。一方、判断過程審査とは、行政処分(本件では防衛大臣の自衛隊機運航処分)に至った行政の判断の過程について、その合理性を裁判所が慎重に検討するという、よりきめの細かい判断手法です。

裁判所が行政による判断過程を審査するには、当然ながら、いかなる判断過程を経て行政処分に至ったかを行政自身が説明する必要があります。しかし、国は、昨年12月の期日で提出した書面において、その点の説明を全くしませんでした。

今回原告から提出した書面では、国に対し、防衛大臣の自衛隊機運航処分の判断過程を明らかにするよう改めて求めました。国にまず説明をさせて、その後に、その判断過程が不合理であることを追及していきたいと考えています。