第6回口頭弁論が開かれました

6月5日(水)に第五次訴訟第6回口頭弁論が横浜地裁101号室で開かれました。傍聴には原告99人のほか、平和センターや支援団体、また、自治体からも参加があり、マスコミも含め法廷は満員となりました。原告の被害陳述には相模原支部と大和第2支部からお二人が陳述し、弁護団から3名が騒音測定方式の違いによる判定の見方、米軍機差し止めに対する行政訴訟の在り方、防衛大臣の裁量権逸脱による自衛隊機の差し止めの可否などについて陳述を行いました。被告・国側からは今回も陳述はなく、書類の提出のみでした。

口頭弁論の後、いつもの通り大さん橋近くの波止場会館ホールで報告集会が行われ、弁護士から口頭弁論の内容説明が行われ、陳述された原告からの感想が話されました。

冒頭、大波原告団団長から「全国でも同じように爆音訴訟が8か所で行われているが、4月16日に開かれた普天間訴訟の高裁判決では地裁判決よりも後退した判決が下された。裁判長はその理由も開示しなかったため、全国の訴訟団も怒っています。厚木では空母艦載機の岩国移駐によって米軍戦闘機の飛行回数は減りましたが、自衛隊機やヘリコプターの飛行回数は増えている実態があります。今、原告団では被害陳述書の作成を弁護士さんと行っていますが、500通近い陳述書が取れています。ご協力に感謝します」と述べました。

以下、報告集会での弁護士の報告内容の要旨を掲載します。

軍用空港の騒音の計算は防衛施設庁方式で

長瀬弁護士

 私はWECPNL(加重等価平均感覚騒音レベルWeighted Equivalent Continuous Perceived Noise Level)という騒音の計算方法について陳述しました。騒音の計算方式には2種類あり、環境基準方式と防衛施設庁方式とがあります。環境基準方式とは民間飛行場のようにほぼ1年中同じような飛行機が同じ回数飛んでいるような場合には適していますが、厚木飛行場のように米軍機や自衛隊機が飛ぶ軍用飛行場の場合では1日で飛ぶ時間帯や飛ぶ回数も日によって全然違います。
こういう飛行場は環境基準方式ではうまく表せないため、防衛施設庁方式が考え出されました。ですので、軍用機が飛ぶ飛行場近くの騒音を表すには防衛施設庁方式の計算によるWECPNLでないと、皆さんが感じるうるささが適切に表現できないのです。このため厚木基地の騒音コンターも防衛施設庁方式が使われています。
しかし国は防衛施設庁方式では環境基準方式よりも高い数値が出てくるから、実際の騒音よりも高めの数値が出てくるのではないかと、そういったことを匂わせる準備書面を出してきました。ですからそれは違いますということを述べたのが、今回私が主張した陳述書です。裁判所も我々と同じような判断をしてきていますが、今回それを蒸し返すようなことを国が言ってきたので、それに対して反論したものです。

自衛隊機の飛行差し止めは認められるべき

石渡弁護士

 私は自衛隊機の飛行差し止めが認められるべきだという陳述をいたしました。防衛大臣は厚木飛行場における運航の管理権限を持っています。そこに裁量権の逸脱、乱用があるかどうか、判断の幅が一定の幅で許容される範囲に収まっているかどうかということです。そこで一定の幅を超えますと、それは裁量権の逸脱、あるいは乱用ということで、差し止めが認められるということになります。
裁量権の逸脱・乱用をどう判断するのかということを第四次訴訟の最高裁は、「様々な事情をもとに検討して、それが社会通念上著しく妥当性を欠くかどうか、それで判断する」と述べました。非常にわかりにくいのですが、最高裁は①周辺住民に睡眠障害を含めて相当深刻な被害が生じている。②国はこれまで多額の費用を投じて騒音対策処置をとってきた。③自衛隊機の運航は我が国の防衛、それから公共の秩序の維持にかかわることによる公共性、公益性が高い。この三つを取り上げました。
最高裁はそれしか判断しなかったので、いったいどうしてそういう結論になったのかというのが全く分からない。裁判所の判断がブラックボックス化しています。
以前の最高裁の判例では、国の行為とか行政の行為が問題となる事案については行政がどういった判断過程を経てその結論に至ったのかという、判断の過程に問題がなかったかどうかを検討の対象にしようという、判断過程審査というのを最高裁でも取っていました。ところが第四次厚木の裁判ではそういう判断過程審査をしなかったので、なんでそういう結論になったかがわからない。
今回、国に対して判断過程をきちんと説明するよう書面で述べました。公共の機関が一定の活動をするにあたっては、その活動の内容、法的根拠、必要性、そういったものを国民に説明する義務、説明責任があるということを述べました。

 

米軍機の飛行差し止めは行政訴訟でできる

切田弁護士

 私は米軍機に対する差し止めについて述べました。米軍機の飛行差し止めは行政訴訟で争われます。行政訴訟は国や公共団体の行為を対象にしたものですが、他の訴訟と区別するために訴訟要件が厳格です。その一つが処分性です。
処分性とは行政庁が一方的な判断によって国民の権利・義務を決定したり、あるいは確定したりすることです。例えば車を運転するにあたって免許が交付されれば運転することが許可されます。つまり一定の条件を満たした人には免許を与えるという手続きで、免許を得られれば車を運転するという利益が得られます。ただそれは行政庁の一方的な判断になるはずです。私たちが行政庁と交渉して、免許をください、と言ってもダメなわけで、免許取り消しなどは行政庁が一方的に私たちの利益をはく奪し、利益をなくすことです。そういう行為で、行政庁の一方的な判断で私たちの権利義務を制圧したりすることを処分と言います。
日本が米軍に対して一方的に何か米軍の権利義務というものを与えたり、はく奪したり、そうしたものがあれば行政訴訟として処分が認められるケースとなります。
厚木基地は日本が管理する基地になっています。現在も米軍機が使っていますが、そうすると日本と何かしらの合意があるはずです。その合意とは安保条約による日米地位協定です。地位協定第2条4項bによって米軍は日本が管理している厚木基地の滑走路を一時的に使用できるのです。
しかし地位協定でどんな場合でもアメリカに許可が下りるかと言えば、そうではないはずです。厚木基地には日本が管理する部分と米軍が管理する部分があります。米軍が占有して管理している部分に出入りする場合に滑走路を使用できますが、それ以外の理由では使用できないはずです。それ以外の理由で使用を求める場合には、防衛大臣は目的の範囲外ということで止めなければならない、止めるべきだということです。
厚木飛行場は日本の国内基地ですから、日本国の法令・法律を守っていかなければいけない。自衛隊法第107条5項では航空機による災害の防止規定、公共の安全を確保するために必要な措置をとると規定しています。
災害というのはもちろん騒音も含むということで、防衛大臣は米軍機の甚大な騒音や、そういうものを発生させるようなときには厚木飛行場の使用を管理者として制限しなければいけないのではないか、自衛隊法第107条5項を米軍機にも当てはめれば、米軍機に対して厚木基地の滑走路が使えないという不利益を与えるわけで、防衛大臣による処分性があるのではないかと主張するものです。
裁判所では今までそういった処分性ということを認めていませんが、防衛大臣が管理している厚木基地という特殊性、こういったことを裁判官に考慮していただきたいと準備書面で述べました。

 

次回の口頭弁論は9月9日(月) 同じく横浜地裁で開かれます。